NAIANI7月号コラム 遺言とは?遺言書を作成した方がいい方とは?(その2)

先月号に引き続き、遺言について説明します。

 

1 遺言は、自分が亡くなった後、それを相続等で引継ぐ方々が困らないように

する側面と、遺言をする人(「遺言者」といいます。)の希望「このように引継

いでほしい」の側面があります。

先月号は、引継ぐ方々が困らないようにするための遺言について書きまし

た。今月号は、遺言者がこのように遺産を引継いでほしいという希望について

書きます。

(1)法定相続分と異なる割合で相続させたい。

民法という法律で、相続人の法定相続持分が決まっております。例えば、

Aには配偶者である奥さんBと子どもが2人(CとD)いた場合、Aが死亡

すれば、その相続人はB、CとDであり、それぞれの法定相続持分は,Bが

2分の1、CとDが各4分の1となります。「Cは東京の私立大学を卒業し、

たくさんのお金を遣ったが、Dは地元の高校卒で、その後、すぐに経済的に

自立したから、あまりお金を遣ってないな」とAが考えたとき、遺言で「自

分の遺産をBとDに各2分の1割合で相続させる」と残せば、法律で規定し

た相続持分よりも遺言が優先されます。ただし、Cに対しては、遺産を相続

させない理由ときちんと説明したほうがよいでしょう。

(2)特定の遺産を特定の相続人に相続させたい。

上記の家族構成でCがAと同居、家業を引継いでおり、AとCが住んでい

る土地と建物がA名義である場合、Aが遺言で「その土地と建物をCに相続

させる」という事例です。どうしてもこの不動産はCに相続させなければな

らないとき、相続人間の仲が悪いときに有効な遺言となります。

(3)相続人以外の方に遺産をあげたい。

熊本県で一人暮らしのEは、結婚をしておらず、子どもはいません。両

親は死亡しており、2人兄弟で、仲の悪い弟Fが東京にいるとします。E

は身の回りを世話してくれているG(Eとの血縁はなし)に遺産をあげた

いと思った場合、Eが遺言を残さず死亡しますと、Eの相続人はFだけ

ですので、Fにすべの遺産が相続されます。Eは遺言をすることによって、

Gに遺産をあげることができます。

(4)特定の団体(宗教法人等)に遺産をあげたい。

これも上記(3)と同様に、遺言をすることで、特定の団体に遺産をあ

げることができます。遺言書を作成する前に、遺産をもらう団体と協議す

る必要があります。通常、特定の団体は不動産をもらうことはなく、それ

を売却して金銭をあげるという遺言になると思われます。

(5)配偶者と子どもがおらず、兄弟姉妹と甥姪はいるが、その方々には相続させたくない。

上記(3)と同様に、Hは配偶者と子どもがおらず、両親も死亡してお

り、兄弟姉妹と死亡した兄弟姉妹の子(甥姪)がいる場合、Hの相続人は

兄弟姉妹と甥姪になります。これらに相続させたくない場合、第三者に遺

贈するという遺言をすることが有効です。兄弟姉妹と甥姪には、遺留分侵

害額請求権がないため、その遺言を妨げることができないからです。

 

来月は遺留分侵害額請求権について説明します。

投稿者プロフィール

川口邦則
川口邦則
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